■第1幕【ハンガリーにあるマリツァ伯爵令嬢の館】
 ウィーンの貴族ヴィッテンブルク伯爵家のタシロは保証人になったことで財産を失い、身分を隠してマリツァの農場に財産管理人としてやってきた。気が利いて、みんなに優しいタシロは、子どもたちやジプシーにも人気がある。そこへウィーンからマリツァが久しぶりに戻ってくる。ウィーンでは多くの男たちに言い寄られたため、コロマン・ジュパン男爵という架空の人物(ヨハン・シュトラウス2世の喜歌劇「ジプシー男爵」に登場する豚飼いジュパンから取った名前)をでっちあげ、その男と自分が婚約するという偽記事をマリツァ自ら書かせたのだった。マリツァに思いを寄せるポポレスク侯爵は、新聞記事を見せて詰め寄るが、偽記事と真相を聞かされ安堵する。タシロと挨拶を交わしたマリツァは、タシロが以前、ヴィッテンブルク伯爵家に勤めていたと聞き、自分の親友がその家の娘リーザであることを明かし、今回、マリツァと一緒にこの農場にやってきたと告げる。タシロは密かにリーザに会い、身分を明かさないよう頼む。一方、マリツァのもとに本物のジュパン男爵が現れる。大富豪との婚約記事を目にして有頂天のジュパンに対し、これは架空のお話と種明かしをする。タシロが独り、歌を口ずさむ。それを聞いていたマリツァはパーティーで一曲披露するよう命じる。タシロはその命令だけは聞くことはできないと拒否する。マリツァは怒り、荷物をまとめて出ていくように指示する。ジュパンの提案で、皆でタバリンへ出かけようと騒いでいるところへ、ジプシー女マンニャが現れ、マリツァに向かって、貴女が恋する相手は近くにいると予言する。マリツァはタバリンに一緒に行くことを断り、一人農場に残る。タシロが別れの挨拶にやってくる。マリツァは自分の非礼を詫びる。タシロはハンガリーの月に向かい、また歌を口ずさむ。

■第2幕【ひと月後のマリツァの館】
 タシロとマリツァはすっかり仲が良くなり、楽しく暮らしている。それを見たジュパンはマリツァとの恋を諦め、リーザへの恋心を打ち明ける。戸惑いながらもジュパンに惹かれていくリーザ。タシロは、ウィーンにいる友人のカール・シュテファンに宛てて、マリツァと自分が結ばれればリーザを不幸にしなくて済むと手紙を書く。その手紙を目にしてしまったマリツァは、タシロとリーザの仲を誤解し、タシロが自分をだましたのだと、衆人環視のなか、タシロに札びらをたたきつける。タシロは、自らの身分と、リーザと兄妹であることを皆に明かしてその場を去る。真実を知ったマリツァは、彼こそ予言にあった自分の恋する相手と知り、タシロの気持ちを取り戻すと決意する。

■第3幕【その翌朝】
 ジュパンとポポレスクは前夜の事件で落ち込んでいるマリツァを励まそうとする。ジュパンはリーザに求婚し、受け入れられる。そこへタシロの叔母であるボツェーナ侯爵夫人が現れる。夫人はタシロの家を買い戻したので、ウィーンに戻るよう伝えにきたのだ。マリツァの心が自分にないと落胆したタシロは夫人とともに出て行こうとする。去り際、マリツァに幼い頃、二人で交わした結婚の約束の話を伝え、手紙を渡す。マリツァもタシロに宛てた手紙を渡す。互いの本当の気持ちを伝えるために。